『ご苦労だったな小十郎。お前はよく俺のために尽くしてくれた』


『だからこれからはゆっくり体を休めてすこしでも長く生きてくれ』













               戯言遊び















はっとし目を開ければ視界は暗くぼんやりと見知った天井が窺えるのみであった。咄嗟に呼吸をするのを忘れて
いたのか瞼を持ち上げた拍子に肩を揺らすほどに忙しなく呼吸をする己が酷く忌々しく感じる。その慌しい呼吸
と連動するように激しくのたうつ心の臓が今の己の同様を表しているようで小十郎は夜着の中に収めてある利き
手でそっと左胸を押えた。静まれ。と呟く微かに震える手に力を込めながら。


「夢見でも悪かったかい」
「・・・・・・・・・ああ。猿飛か」

どこからともなく聞こえた声に小十郎は気だるげに答える。何時もならばそれまで眠っていようが何をしてい様
が刀を抜いて追い払いにかかるのだが生憎今夜はそんな事に体力を使う余裕が小十郎にはなかった。

「随分と気配が乱れれるじゃない」
「・・・うるせぇ。もう失せろ」
「どんな夢を見たんだい?」

すとん。とも音を立てずに佐助は小十郎の横になっている蒲団の隣に姿を現した。現したと言っても灯りも点い
ていない、締め切った真夜中の室内である。いくら闇に目が慣れたからと言っても佐助の姿は非常に曖昧にしか
見えない。

「顔色が優れないね。それに旦那、汗だくだ」

けれど佐助には闇の中でもよく見えるのか横になったままの小十郎の様子を的確に当ててゆく。ゆっくり佐助が
身を屈める。蒲団の端に膝を着きかちりといつの間に外したのか手甲を取り去った素手で玉の汗の浮いた小十郎
の額に張り付く前髪をかきあげてやる。

「これは冷や汗?それとも脂汗?」
「・・・いい汗じゃねぇのは確かだな」

相変わらず気だるそうにしている小十郎に佐助はうっとりとするように前髪を弄んでいた指をそのままするりと
滑らせ耳朶へ移動させる。蒲団の端に着いていた膝を夜着に乗せ少し圧し掛かるようにしながら不快そうに眉間
に皺を寄せる小十郎の顔を覗き込む。

「気を紛らわせてあげようか」
「夜這いなら日を改めな。今日はそんな気分じゃねぇ」
「今、目を瞑るとまた同じ夢を見るかもよ?」
「目が覚めた」
「ならまだ夜は明けないんだからさ、いいことしながら時を潰すのも一興だと思うんだけどね」
「・・・だからそんな気分じゃねぇよ。気がのらん」

それじゃあ俺様が、アンタがどんな夢を見たのか当てれたら相手をしてくれるかい?

佐助は悪戯に小十郎の耳朶を弄りながら少し圧し掛かっている体に体重をかけてくる。闇の中でも顔の判別がつ
くほどまで近づいたのか漸く小十郎は佐助の顔をきちんと認識する事ができた。そしてその認識した顔が不快な
までににこやかだ。

「てめぇが俺の見た夢がわかるって?」
「わかるさ。簡単なもんだよ」
「はっ。なら当ててみろ。そうしたらのってやらん事もねぇよ」

「言ったね。・・・あんたが魘されるほどの悪夢なんて数えるほどもないんだよ」
「知った風に言いやがって」

「夢の中で独眼龍が死んだかい?殺された?病気?それともアンタが殺した?」
「生憎そんなくだらねぇ夢なんてついぞ見たことねぇな」

そう怒気を孕みながら口角を歪める小十郎に佐助が小さく笑い出す。ふふと静かに含むようにして笑うそれに小
十郎の怒気が更に増すのを感じた佐助は更に笑みを深いものにする。

「相変わらず冗談が通じないお人だね」
「・・・・・・」


「アンタの見た悪夢ってのはあれだろ。アンタが独眼龍にいらない。って言われる夢だろ」
「っ!」


どうだい当りかい?小十郎が咄嗟に息を呑むのを見た佐助はそれまで小十郎の耳に触れていた指をすぅと項の方
まで持って行く。撫でるよりもまだ丁寧なその触れ方に小十郎の肩がぴくりと揺れた。

「どうだい当りだろ?」
「・・・・・・・・・」
「ふふ、じゃあ俺様の好きにさせてもらうよ」



















ぴくりと浮いた腰に手を回した佐助はそのまま腰を少し持ち上げ畳にはみ出た夜着を引っ張り寄せるとその浮い
た腰の下に宛がった。くたりと力の抜けている小十郎が肩を揺らめかしながら浅く息をするのを佐助は膝立ちし
た状態で見下ろす。好きにすると言ってから直ぐに一度吐精させた小十郎は先ほどよりも更に気だるそうにして
いる。そんな小十郎の状態をいい事に香油を掬った指を夜着でも持ち上がった腰の更に奥の秘部へ宛がった。

「あんたと、独眼龍はいくつ歳離れてんだっけ」
「・・・っ。はぅ。あァ?十だが・・・」
「そっか・・・」

力の抜けゆるりと開いている足を佐助は膝に手を添えて大きく開いた。もう一度香油を掬った指を今度も開いて
いる方の手を尻に添えその奥の秘部に寄せる。ぬめる感じが不快なのか眉間に皺を寄せ足の指に力を入れる小十
郎に佐助は指を香油がよく馴染む様に小さく円を描いた。

「十も離れてたら不安になるよね。俺様もうちの人とあんたらと同じくらい離れてるからわかるよ」

ゆるゆると動かしていた指の中指だけを佐助は秘部に差し込む。びくりと小十郎の膝が跳ねそれを開いている方
の手でよしよしと撫でてやる。すると気に入らないのか緩く蹴りが入って来るで佐助は少し笑いたくなった。

「主殿達が年上ならそう悩む事もないんだろうけどさ」

中指をくるりと回し秘部の中に香油を馴染ませるように手を動かす佐助の口は今及んでいる行為に少しも似つか
わしくない事ほど緩やかに語っている。

「戦で生き抜けてもいつから絶対主よりも先に駄目になるこの肉体が恨めしいよ」


十離れているという事は十早く己たちは主達よりも先に衰えるという事だ。人間は戦や同じ人に勝てても消して己
の老化の早さには勝つ事はできない。

つらつらと歌うように語る佐助は腰を撫でながら増やすよと小さく告げる。ぅん。と小十郎が首を逸らす。
中指と人差し指で緩く出し入れを繰り返す佐助はなんて言われたの。と小十郎の足の間にある己の体に膝を摺り
寄せてくる小十郎の臍に小さく口付けを寄せながら尋ねた。

「どんな風に言われたの?」
「ぁっ・・・ん。なん、で・・・てめぇ、にっは。教え、る必要が、ぁる・・」
「知りたいんだもの」

佐助は身を乗り出し秘部に埋めた指をくいと曲げた。小さく呻きながら小十郎が仰け反る。露になった首を鎖骨
の傍から作り物のように整った顎までを佐助は喉仏の上を通りながら舐め上げる。

「ふぅ・・・っあぅ」
「なんて言われた?もういらないって言われた?それともご苦労だったって言われた?」

曲げた指を伸ばしもう一度曲げる。それと同時に親指で会陰を押した。夜着を下に敷いて高く上がっている小十
郎の腰が指を曲げるたびにびくり跳ねる。小十郎の首筋に緩く歯を立てた佐助己の腹に濡れた物が触れた感触に
二人の腹の間を覗き込む。佐助の腹に触れていたのはいつの間にかもう一度立ち上がった小十郎の性器だった。

「安心しな旦那。まだこんだけ元気なんだ隠居はいっとき先だよ」

くすりと笑う佐助は腰に手を添え秘部に埋めた指を先ほどより激しく動かした。小十郎の腰が指の動きに合わせ
て跳ね上がる。それまで緩くしか動かしていなかった指と秘部の間からクチっと小さく音がする。けれどその音
は小十郎の荒く吐く息とその合間に零れる嬌声に紛れて本当に些細な音になっている。

「ぁあぅ・・・はぁっ――――ぁは」
「・・・もういい?」

佐助の言葉にこくこくと首を立てに振る小十郎に佐助はもう一度上半身を伸ばし小十郎の口に触れるだけの口付
けをした。ずるりと秘部から指を引き抜くと小十郎が息を呑み肩を引きつらせる。それに佐助が腿を擦りながら
気をそらしてやる。下帯を緩め立ち上がっている己の性器を取り出した佐助はそれにも香油を塗る。小十郎の片
足を持ち上げ既に高い所にある腰が更に持ち上がる。
性器に手を添え小十郎の秘部にその先端を宛がった。ひくりと小十郎の喉が動く。佐助は息を止めないでね。と
吐息混じりに言うとゆっくりと腰を動かし小十郎の中に侵入した。

「あっ・・・はぁっ―――はぁっ――ぁ、はぁっ・・・ぅあっ」
「ぅっ・・・もう、ちょっと力抜ける?」

敷布団を掴み腕の筋を浮かせる小十郎の腕を佐助は強すぎないように気をつけながら掴んだ。仰け反るように首
を逸らせた小十郎は呼吸をしやすい角度に何とか持っていき息を吐いて力を抜くのに専念しようとしている。敷
蒲団を握っていた手はいつの間には小十郎の腕を持っている佐助の腕へと移動しており小十郎の腕を掴む力の強
さに佐助はちらりと眉を寄せる。ゆっくりとした動きで佐助の性器は全部小十郎の中に納まる。
息を整えようと懸命になっている小十郎のくしゃりと乱れた髪を佐助は己も息を整えながらかきあげてやる。

「ふぅ・・・なら、いらないって言わせなくすりゃいいさ」
「・・・あぁ?」

小十郎に余裕が出てきたのを見て取った佐助は緩く腰を動かし始める。途端に腰を跳ねさせる小十郎は佐助の突
然の言葉に小さく首を傾げた。ずるりと引き抜いてはゆっくりと押し入ってくる佐助の性器に背骨を伝ってくる
ような刺激が首の後ろにまで上がってくる。ゆるい動きだというのに佐助が腰を動かすたびに足の裏が熱くなる
ような錯覚を受ける。

「あ、んたがいなきゃ駄目だってあいつに言わせ、てやんなよ」
「・・・ぅっ、あぅ、あぁっ――ん、なこと、できっはぁ」
「別に主を駄目にしろってんっじゃないさ。ただこっちは当に頭ン中主でいっぱいなんだ」


――――だから主の頭ン中もちょっとくらい俺らでいっぱいになったっていいじゃないさ


殊更深く腰を入れ伸び上がった背を屈め佐助は小十郎の汗の浮く額に口付けを落す。今浮いているのは先ほどの
ような冷や汗といった気分の悪いものではない筈である。深いところまで探られる感覚に小十郎は歯を食いしば
る。その綺麗な噛み合せを舌で舐めてやる。

「・・・っふぅ」
「魅力的だろ?主にさお前が傍にいないと駄目だって言われるのは」
「ばっあぁ、ぅん――」

小十郎が何か言いかけた所でタイミングよく突き上げてやる。意図的な妨害が気に入らないのか思うように喋る
事ができないのがもどかしいのか嬌声の合間に舌打ちがたまに聞こえる。腰を打ちつけながら片方だけ持ち上げ
ていた足を今度は両方抱え膝裏を肩にかけた。そのまま膝立ちするように腰を持ち上げる佐助に小十郎の体もつ
られて下半身がずるずると持ち上がる。挿入した性器の角度が変わったのか小十郎の眉間の皺が難しげに寄る。
漏れる嬌声の合間に聞こえるクソだのチクショウなどの文句が漏れるのが非常に小十郎らしく佐助は腰を動かし
ながら小さく笑う。

「ぅあ、あ、ん―――ぅ、はうっ」

徐々に早くなる佐助の動きに合わせてゆらゆらと小十郎も腰を動かす。その合間にも小十郎の耳元ですくすくと
小さく笑いながら彼の癇に障るような事を囁く。その後には荒い息を吐きながらも佐助の頭を小十郎が小突いて
来るのがなんとも彼らしくお返しに佐助は腰をぐるりと回すように動かした。

「旦那に、さ、ずっと傍にい、てくれとか、さ、言われたら、とかさ、思うでしょ」
「っは、ぅあ、お、前はやっぱ、りっ。阿呆だ、な」
「ふふ夢見るのはタダだもの」

ぐいと小十郎の体を二つに折るように担いだ足ごと佐助は小十郎を覗き込むように前に屈んだ。体を強いる無理
な体制のきつさと胸への圧迫で低く呻く小十郎に佐助は啄ばむように口付けを何度も落す。先ほどまで小十郎の
腰に宛がっていた夜着を不要とばかりに佐助が端によせる。夜着も敷布団も既に見るも無残に皺くちゃとなって
る。

「ふぅ・・・ぁあ、ぅあ」

段々と速さを増す佐助の腰に小十郎は首を逸らし何とか腰から上がってくる痺れを余所へと逃がそうとする。目
の前で揺れる明るい所で見れば赤い髪も今はぼんやりとしか判別できず小十郎の視界には暗いだけで色彩などな
いに等しい。けれで赤かったと記憶する髪をたまに気まぐれに引っ張ると代わりにとばかりに耳を軽く噛み付か
れた。そんな色彩のない暗い視界がチカチカと白さを帯びてきたのを自覚すると同時くらいに小十郎は己の腹を
濡らす性器を佐助が器用に弄っているのに気付いた。

「っ、はぁ・・・そろそろいきそ?」

耳元で忙しなく荒い息を吐く佐助の言葉に小十郎は首を縦に振り頷きながら悔し紛れに佐助の背中を踵で蹴る。
その背中の痛みに少しだけ苦笑を浮かべた佐助は一度息を吐き直ぐに歯を食いしばる。お互いそろそろ終わりも
近い。佐助は腰の動きを一回の抜き挿しを軽いものから重いものに代え的確に小十郎の良い所を突く様な腰の動
きにした。

「ひ、ぁう、あぁ、っはぁ・・あぅ」

佐助は目の前にある小十郎の表情を食い入るように見る。普段、常に厳つい表情をしているくせにこういう時に
素直に快感を受け止めようと意図的に感じ入るに意識を集中させている顔がなんとも人間臭くて佐助はその時の
表情がたまらなく好ましいと思う。目を瞑り眉間に皺を寄せ力んでいるくせに口の締まりは緩んでいる。この男
のこの表情は小十郎を組み敷かねば味わえないだろうと思うと佐助はそれだけで充分にイキそうな気がした。

「はぁ、ぁあっ・・・・・ぅぁ、くっはぁ」

小十郎の口元が戦慄いて着たのを見て取った佐助は腰の打ちつけを強くした。それと一緒に小十郎の耳元へ口を
寄せ小さく声色を変えて小十郎にだけ聞こえる声で囁いた。

「っくぁ―――――っ」

ぎりと佐助の耳元で小十郎が強く歯を食いしばる音が聞こえる。それと同時に佐助の握っていた小十郎の性器が
大きく脈打ちその手を熱く濡らした。そして佐助も小十郎の秘部の中で熱を吐き出した。


















「ぶっ殺す!!」



夜が明け最早情事の余韻も何もとうの昔に消え失せそんな事があったことも知らないようなうららかな朝の元、小
十郎の怒声に佐助はわざとらしい悲鳴を上げた。

「テメェあん時のあれはなんだ!!あァ?」
「いつのあれなのか俺様にはさっぱり」

寝巻きのまま既に刀を抜いた小十郎はゆっくりと佐助に歩み寄ってくる。おそらくこれがかの有名な極殺というや
つなのであろう。そんな怒気のオーラを漂わす小十郎に佐助は腹が立つほど爽やかな笑顔を向ける。

「っテメェ。なんの真似事だ?」
「ちょっと独眼龍伊達政宗公のお声を真似ただけじゃない」
「・・・ほぉ」
「っていうか褥でのあれを今言うのはちょっと野暮ってもんだと思うよ?」


佐助の口にした名を聞いた小十郎は更に怒気を膨脹させた。よく見れば前髪が乱れて額にかかっている。


「アンタねぇー。自分だって満更じゃなかったんだから醜い八つ当たりはやめようぜ」



ちょっとアンタがイク寸前に独眼龍の声で『ずっと傍に居ろよ小十郎』って言っただけでしょうが





「・・・・・・・・言いたいことはそれだけか」
「・・・はい?」
「・・・・・・・・・・・・こんの屑野郎が・・・」






「地獄へ落ちろやぁああああ!!」
「うそだろぉおおお!!」




いやでも旦那明らかに独眼龍の声に反応しただろう、とかあの後もう一回したがったじゃない、とか大体いい歳
して夢に魘されてめそめそしてんなよ、という佐助の主張は小十郎の雄叫びの前にはささやかな訴えにしか過ぎ
なかった。











おわり




わぁあああああ!初エロ!笑
初めてではないけれど晒すのは初めてです。弱った小十郎が書きたかったです。
でも恥ずかしかったので最後むりやりオチつけました。軟弱者です。

あと佐助は忍だからきっと中井ボイスも出せます。たぶん


2008.10.05





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