その日、佐助は片倉小十郎に呼び出されて、奥州までやって来た。佐助一人だけが呼び出されたことに疑問は生じるが、相手が己に敵意を持っているわけではないと知っているため、気軽に出掛けた。 「ども、こんにちは」 天井から顔を出すと、小十郎は微かに眉間の皴を緩める。 「よく来たな。まあ降りて来い」 そう言われ、素直に降りた。直後、何かを顔にかけられた。 「へ?」 少し舐め、ああ茶かと思った瞬間、何かに殴られた。鉢金が飛んでいく。佐助は目を丸くする。殴られたことより、殴った相手に驚いていた。 「え、片倉の旦那?」 再び腕が伸びてくるが、今度は避けた。そのまま距離を取ろうとするが、腕を引かれ、足を払われる。倒されるままに受身を取ろうとしたら蹴り飛ばされ、畳に叩きつけられた。身を起こそうとする前に腹を蹴られる。 それからどれくらい経ったことか。その間佐助は小十郎から蹴られ殴られの暴行を加えられていた。反撃しようとしたり、逃げ出そうともしたが、その度に小十郎はそれを妨げる。 「も、なんなわけ!?」 「煩ェ」 「ぎゃ!」 理由を聞こうと顔を上げたら、踏みつけられた。 一体なんなのだ。自分が何かしたとでも言うのか。いや、恨まれるようなことは小十郎にはしていないはずだ。 困惑していると、ふと身を起こされた。また殴られるかと思っていると、小十郎の顔が近付く。そして、佐助の口の端についた血を舐める。それに佐助は慌てた。 「ちょっと、忍の血は毒混ざってることもあるんだから、舐めないでよ」 「俺に指図すんな」 「いや指図じゃなくて」 「黙れ」 また殴られた。 親切心で言ってやったのに、なんという横暴か。 遂に佐助は耐え切れず、小十郎を睨みつけた。すると、小十郎はにやりと笑みを浮かべる。 「ああ、やっぱりな」 突然の言葉に、佐助が訝しげに小十郎の顔を見ていると、小十郎は佐助の頬に手を当てる。 「いい顔じゃねえか」 「何言ってんの?」 「こうやって痛めつけたら、さぞいい顔をするだろうと思っていたんだが、予想以上だな」 「あの、もしもし?」 わけを聞こうと思っている佐助に対し、小十郎は一人で話を進める。先程から噛み合っていない。 「これからは定期的にここに来い」 「は、お断りだね」 「テメェに拒否権はねえ。もし来なかったら、見つけたその場で縄で縛って、ここまで引きずって行くからな」 「あんた何様のつもりだっての。俺様はあんたのもんでもなんでもないんですけど」 「所有や占有は諦める。どうあってもテメェは真田のもんらしいしな」 「わかってるなら」 「忍の猿飛佐助なんざいらねェ。俺が欲しいのは、お前が汚ェと思ってるその中身だ」 「は?」 「いつか言ってただろう。自分の中身は大層汚いんだと。その中身を俺によこせって言ってんだ」 小十郎の言葉に、佐助は嫌悪の色を隠さずに顔をしかめる。 「随分な物好きで」 「そうやって何もかも曝け出してる姿を欲しいと言ってくれるやつがいるんだ。素直に貰われとけ」 「冗談! 俺様、汚い部分も含めて真田の旦那に捧げてるんで」 そして逃げ出そうとするが、腕を強く掴まれた。 「テメェが何言おうと、俺はそれを貰うからな」 耳元でその声が聞こえたと思った瞬間、激痛が走る。恐らく、耳を噛まれたのだろう。 「っつ、う」 思わず呻くと、低い笑い声と水音が聞こえた。また血を舐めているのだろうか。 「血舐めるなんて、相当な悪趣味だよな」 「この程度の出血じゃ死なないだろ」 「そういう問題じゃなくて」 「とりあえず」 目の前が一瞬暗くなった。目の焦点があってきて、小十郎の目がひどく近くにあるなと思った。 「え」 「こっちから貰うか」 その後、小十郎と佐助に何があったのかは、当人たちのみぞ知る。 「ギャーーーー!」 「っ、テメ、待て!」 「やなこった! こんなトコ二度と来るかー!」 ※というわけで、なんですかこれは黒葉さんと叱られそうです。すみません、やっぱり清く正しく明るいDVは私には無理だったようです。 ありがとうございます黒葉さん!!!!!!!!!この素晴らしき品は『無礼千万』の黒葉さんから頂きました!! ちょう嬉しいんですがwwww黒葉さんの小十郎は独占欲強いところが大好きですw佐助のこと束縛しそうなくらい独占欲強そうなとこが堪らん好きww 私の書いたやつと交換でこんな素敵なの頂けてるなんて!!ありがとうございます!!! |