夫の嫁愛のススメ









今日は待ちに待った週末。旦那様はやれやれといった風に疲れた様子で家に帰ったきました。
旦那様の名前は片倉小十郎。一年ほど前に結婚したばかりです。

「あ。おかえんなさい」
「ただいま」

玄関を開けた音で夫の帰宅に気付いた妻である佐助はパタパタと旦那迎えに小走りで、何て事は少しもなくペタ
ペタ普通に歩いて夫を出迎えにリビングから出てきました。

「おつかれさまー」
「飯は」
「いやいや、そんな事よりさ!!」

疲れて帰ってきた旦那を余所に佐助は見てみてとこれ見よがしに着けているエプロンを外して見せました。

「これさ!今日かすがから貰ったんだ!入らなくなったってさ。幸せ太りか、って聞いたら殴られた」

まるで捲くし立てるように凄い勢いで喋る妻が履いていたのはデニム地のホットパンツです。
普段佐助はあまりこういった丈の短い物を履こうとはしません。その理由は小十郎自身は無意識ですがこういっ
た物を佐助が履くと機嫌が悪くなり顔の怖さが二割増になるため佐助が控えているだけなのですが。

旦那様は奥様の事が大好きでたまらないのです。

どうだ。と胸を張る佐助を頭の天辺からつま先まで見た小十郎はそのまま深く息を吐くとそのまま妻の露になっ
ている額を軽く弾きました。

「流石に年齢を考えろ」

溜息は呆れの溜息だったようで小十郎はそのまま疲れたと言いながら妻の横をすり抜けて行こうとしました。

「ちょ!年齢って俺様まだ二十五歳なんですけど!
 それに年齢の事をあんたに言われたかねぇよ!今年三十路の旦那様!」

年齢の指摘を受けた佐助は完全に喧嘩腰で夫に食って掛かりました。女性というのは二十歳を過ぎた瞬間から年
齢の事をとやかく言われるのを快く思いません。それは普段女ぽさのかけらもない佐助とて例外ではありません。
しかもそれが四つも年上の旦那にだけは言われたくありません。

「まだ全然似合う年齢だろ!」
「二十五なら・・・もうちょっと落ち着いた格好にしろ」
「ほし○あきはあんたより年上でもこんなんじゃないか!」

思わずとんでもない人物の名前を叫んだ嫁に小十郎は思わず呆れたような顔をしました。
週末で疲れて帰って来てなぜ未だにリビングに入れずに妻とくだらない事で口論紛いの事をしているのでしょう。
わからねぇ。半ば考えるのが面倒になった小十郎はそう簡単に結論付けると珍しく嫁の事を名前で呼びました。

「佐助」
「な、なんだよ」
「自分の胸に手を当ててよく考えろ」

へ。と佐助は何事かわからず咄嗟に言われた通り自分の胸に手を当てました。急に名前を呼ばれたため思わず狼
狽えてしまったのです。
そして胸に手を当て何を考えるのだろうと首を傾げながら夫の顔を見ると夫は非常に真面目な顔をしていました。



「いいか、よく聞け」







お前にはあの谷間は逆さになったって作れねぇよ。







「だからそんな人物を引き合いに出すんじゃねぇ」








言うだけ言った小十郎は満足気にくるりと体の向きを変えリビングに入って行きました。
夫的にはグラビアアイドルと比べなくともお前は充分魅力的じゃないか。という気持ちが篭っていたのですが
そんなこと佐助には伝わる筈などありません。
それに小十郎は本当にホットパンツやミニスカートと言ったたぐいを嫁に履いて欲しくないのです。
とくに小十郎の嫁である佐助はウエストから腰、ヒップ、そして太腿にかけてのラインが抜群に素晴らしいの
です。"天は二物を与えない"とはこの事だと結婚する前に嫁の腰と胸を見比べて心底思いました。
そんな下半身がモデル並みの素晴らしさを持つ嫁を何処の夫が態々露出の多い格好させて周りに見せびらかす
でしょうか。
小十郎は他人に見せびらかすより自分ひとりで見たいと思う。どちらかというとムッツリです。

小十郎は本当に佐助の事が大好きで大好きで堪らないのです。



でもやっぱりそんな気持ちは少しも妻には届きません。届く筈がありません。





そして旦那様がネクタイ緩める頃にマンション中に響くような大声で「離婚だぁ!」という奥様の叫び声が夜
空に轟きました。



そうして今日も新婚家庭の夜は深けていきます。










おわり




拍手に載せていた夫婦の小ネタ。
ほ○のも小十郎も実年齢とは見た目がなぁ…と思ったところからきました。
佐助の下半身は髪の領域だと思うわけです。そして旦那様はそれを毎日(主に風呂で)
顔には出さずににやけてると思うと羨ましくて軽く嫉妬が入ります。



2008.06.09



 
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